Heaven 


 藤堂が、やたら俺の髪に触れることが多くなった。10月も半ばに入り、スタッフたちはカウントダウンイベントの企画に余念がない。その中では社長である綺羅も、企画責任者であり助っ人奏者でもあり・・と、かけまわっていた。当然、まゆらも忙しそうだ。だが彼らは忙しい合間を見つけては儀式を繰り返す。忙しいからといって、ソレだけはかかせないものなのか。ソレとも何らかのストレスを発散させているのだろうか。
「ねぇ、代表。俺らフツーでいいんすか?」
義純率いる「スナイダーズ」メンバーは、レッスンが終わると事務所にたむろし、時々俺のいるスペースに顔を出しては思い思いの事をしている。
「フツーでいいよ。まだ売れてないし。年末、年始は好きにしろ。」
「エー?好きにって言われても・・。ライブ予定も決まってないし。レッスンだって後回しっすよ。」
「バイトも、レッスン先行でうまく入れないし。」
そう、ぶつくさ言いながらふてくされているように見えたが、実際は悠々自適に煎餅をかじりながらマンガ本を読んでいる。
「ほら、何時までもここに佇んでいないで。」
俺の昼食を運んできた藤堂に促されながら、彼らはしぶしぶ出ていった。藤堂は小さく溜息をつきながら机にサンドイッチと珈琲を置く。
「聖さんも・・。彼らに甘い。邪魔ではありませんか・・?」
彼らが散らかしていったものをせっせと片付けながらぼやく。俺は温かい珈琲を口にはこびつつ、背もたれにもたれた。くつろぐ俺の肩に回される腕。軽く髪にキスされた。
「伸びましたね・・。髪。切りましょうか?」
「ン・・。お前の手が空いたときでいい。今は忙しいんだろ?」
「ええ。稼ぎ時。ですね・・・。今年は、社長はまゆらさんの助っ人に飛びまわるそうですし。特番もありますからね。」
藤堂は俺の髪を弄くりながら、ぼんやりと呟くようにして喋り、一時の休息を取っているかのようだ。不意に、カーテンが開き藤堂の手は素早く退く。
「あっれー?メンバーは?」
その声の主はスナイダーズメンバー、御厨学向。通称、トム。金の髪と、青い眼を持つ20才の少年で、祖父がアメリカ人。その血の先祖がえりでその色素を持ち生まれた。
「い、今部屋に戻りましたよ。」
「・・ふーん。あ、聖さん。お昼またサンドイッチと珈琲?栄養偏るよー。」
彼はそういいながら部屋に入りこみ、サンドイッチを掴みあげるとパクン。と食べてしまった。一気に食べきると、その指をぺろぺろと舐める。カップを掴み珈琲を飲み干す。
「トム君・・。君に礼儀は・・。」
「イチャイチャしてた人に言われたくないもんね。ね、聖さん。も一個いい?」
ぐうの音もでない藤堂。それを尻目に、御厨は残りのサンドイッチを頬張る。何処か、懐かしい。昔の・・。綺羅と、仁也の小競り合いに似ている。
「俺も。イチャイチャしていい?」
「・・俺とか?」
「そ。ね、いいでしょ?とーどーさん。」
御厨に可愛く攻められ、藤堂はどうぞ。といわんばかりに無言で部屋を出ていった。
「・・お、怒らせちゃったかな・・。」
「さぁな。」
沈着冷静な男だが、この頃やけに疲れているようだから気力も限界、か・・。そうでなければ、飽きれて嫌気が差してたか。どちらにせよ、子供には無関心ってとこか。
「ね。俺もその髪に触っていい?」
そっと伸ばされた長い手。戸惑いながら俺の髪に触れ、クルリと捻る。徐々に彼の体が近づき、その手は俺の頬に触れた。少し冷たい体温が心地いい。
「積極的なんだな。それとも、意味深、か?」
「んー。初恋、かな・・。変な下心はないよ。でも俺。とーどーさんは好きになれそうもないなぁ・・。」
うっとりとした潤んだような瞳。熱い視線・・。青い瞳は深く色づく。
「ん?」
「だって。いつもイチャイチャしてるもん。聖さんを独り占めしててさぁ・・。ずるいよ。」
顔が近づく。青い瞳が閉じられ・・触れる唇。吸うわけでもなく、舌で舐めるわけでもない。軽い・・フレンチキス。蛍光灯の下、金の髪が輝き揺れた。俺は彼の手をとり、張りのある美しい腕にキスをした。
「俺。完璧に歌い上げる。約束する。誓うよ。だから・・。だから。もう、震えないで。脅えないでいいよ。俺を信じて。」
その自信が何処から来るのか。凛とした強さ。無鉄砲な若さか。敗北の経験のない無垢な感情がその強い瞳を作る。呑み込まれそうだ。
「お前の何処を信じればいい?魅力的なのはその青い瞳。俺が殺した瞳。」
手を伸ばし、頬に触れようとしたその手を阻まれた。御厨はその指に唇を当てる。
「俺は生きてるよ。目の色じゃなくて、俺を。俺だけを見て。俺、欲張り?」
指をぺろりと舐める。軽く絡めて、舌先で擽る。唇で挟み、軽く吸いつき・・。
「俺を誘っているのか・・?御厨。」
「そー見える?エッチだね、聖さん。」
小悪魔な瞳が怪しく輝いた。
「じゃあ。ベッドにこちらを向いて座って。俺を誘惑しながら脱いで。その指でイけ。下の口も自分でほぐせよ。」
「えー?」
「俺をその気にさせな。同じ色なだけじゃ、商品に手はださねぇよ。」
「商品ね。うーん。わかったけど・・。聖さんってマジ。エロイ。」
俺の耳を軽く噛むと、よく見ろよ。そう呟いて息を吹きかけ、彼はベッドに乗る前にシャツを脱いだ。痩せているが骨ばっただけでなく、綺麗な筋肉がついた肌。
「ほら。触ってみたいだろ?」
俺を誘いながらゆっくりとベッドにあがり、焦らすようにズボンを脱いでいく。現れる驚くほど長い整った足。女のように少し括れた腰と、小さな尻。両手でナニを隠しながら、下の口を指で覆う。躊躇することなく開かれる膝。長い指で、サオや袋を撫で上げ、熱い吐息を吐き瞳は俺を誘う。指一本で先端を隠し、濡れ始めたスジをサオにたらした。白いスジを指で掬い上げるとそのまま下の口に塗りつける。
「ねぇ。もう・・熱いよ。食べたくなったでしょ?」
「ああ。旨そうだ。」
「・・・来てよ。見られてるだけで・・・イきそう.。」
髪をかきあげ、項を食べて.とばかりに見せた仕草。・・細い首・・.車椅子から立ちあがり、御厨の寝転ぶその身体の脇に手を置いた。
「ひーじり。駄目だよぉ。朝イチから食ったでしょー?」
インターホンから綺羅の声が聞こえ、一気にやる気が失せた。
「えーーーーー!!誰.誰食ったの??」
インターホンの声に噛みつく御厨。
「誰って・・。まぁ。」
「とーどーさん??そーなんでしょ??」
「誰でもいいよぉ。ひじりぃ。熱出るから1日一回だよ。んじゃね。」
ぷっ・・。とインターホンのスイッチが切れ、御厨はヴーっと低く唸る。
「何だよ、折角・・。誘惑したのにさぁ。って、社長、いつも聞いてるの?」
「ああ。まあね。俺にプライベートはないからな。嫌か。」
彼はベッドの上であぐらをかき、膨れっ面。
「聖さんって、聞かれてないと萌えないタイプ?」
「まさか。」
「でも・・。それもエッチくさくっていいかも。」
裸のまま俺に抱きつき、俺の体をベッドに押し倒す。
「いいよ。俺、とーどーさんよりもっと。聖さんを熱くさせてあげるから。夢中にさせてみせる。誰よりも俺を愛してるって言わせる。宣言したからね。」
「・・すると何かあるのか?」
「あるよ。言葉って、言ったらそうなるように動くんだから。藤堂さんに宣戦布告もね。」
飛び跳ねるようにして俺の体から離れた彼は服を着こむと、俺の頬にキスをして出ていった。苦笑が漏れる。
「若い・・な。」
仁也も、シンの強い男だったっけ。御厨より若かったから、もっと無鉄砲なとこもあった。だが、もっと周りを見ていたような・・。闘志剥き出しにするタイプじゃなかったから、気がつかなかっただけか・・?なあ・・仁也。ここに来て、今の彼のように囁いてよ。愛してるって・・。言って。俺も言うよ。ずっと・・。