「ちょっとおー。聞いてるの??怪奇連続殺人だって、ねー。ねえってば。ちょっとぉー。」
寝入りばなをフラネルロ・バースという女に揺すり起こされた。
「いい?読むわよ。」
耳元で囁くように語られる事件。大都会と称されるが故の怪奇殺人・・か。
「・・女たちは、皆、キレイに服を着ているが、膣内にはバイブのようなものが入れられており・・。死因は窒息死。だけど、もがき苦しむ様子は無く・・。」
そんな話よりも俺はまだ眠りたい。フラネルロにしっかりと掴まれている布団を引き寄せる。
「ちょっと・・。人の話、聞きなさいよ。刑事さん二人も来てるんだから。久しぶりの仕事でしょ??探偵屋なんて気取ってないで何でも屋をやりなさいよっ!!」
「・・煩いなぁ。俺は眠いんだよ。お前が勝手に引き受けたんだろ。」
「何よ。まだ引き受けるなんていってないわ。」
「・・じゃあ、調書なんて読み上げるんじゃねえよ。」
・・また、勝手に話を持ち込んで・・。厄介な女を拾っちまったもんだ。煩いし、人のことにはすぐ首を突っ込むし・・。
「ちょっと・・。話は顔を見てするものよっ!!!」
力ずくで無理やり布団を引き剥がされ、フラネルロは一瞬動きを止めたが、すぐ事を認識したのか目を丸くし、両手の拳を振り上げると力いっぱい俺の顔を殴った。それから、鼓膜が破れるほどの悲鳴をあげきびすを返すと、脱兎のごとく部屋を出て行く。部屋に舞う調書の紙・・・。悲鳴と、打撲で否応無しに起き上がった。
「・・痛てえな・・。」
「この、ウルトラばかー!!!」
ドアの向こうから叫び声が聞こえる。・・そういえば、フラネルロって27才にもなるって言うのに、処女だっけか?まあ、そんなことどうでもいいか。目の前の客用ソファに座る刑事二人は、呆気に取られたような素振りで口を開いている。間抜けズラ・・。起き上がり、首を鳴らした後煙草に手を伸ばして火をつけた。やっぱり、寝起きには一服・・・。
「失礼。」
客の一人が上着を脱ぎ、俺の体にあてがった。
「何だ。見慣れたものでも気になるのか?」
「・・いえ。礼儀、かと・・。」
「このカッコで生まれるんだ。硬いこと言うなよ。」
彼の上着を返したが、
それでも、またフラネルロに拳を入れられかねなかったので引き剥がされた布団を腰の周りに巻いた。
「で?俺に何のようだって?」
「はい。連続殺人のプロファイリングをお願いしたいんです・・。」
「ンなもの、そっちが得意科目だろうよ。俺の専門じゃないね。」
「いえ。ご専門と伺っております。」
「誰に?」
「ルーブル警視。同期だと、唯一使える奴。そう仰られていました。」
嫌な奴の名前を出す刑事だ。あいつとは一時コンビを組んでいたことがあるが、どうにも固すぎていけ好かない男。まったく。俺はもう刑事じゃねえっツーんだよ。
双方黙りこくった沈黙の中、フラネルロが紅茶を運んできた。丁寧な仕草は刑事達の視線をそそる。その代わり、俺に向けられたのは彼女のキッと睨んだ視線だった。
「なんだよ。」
「これから、寝るときは自分のベッドで寝ることね。」
ソーサー付きのカップを突きつけられ、否応なくソレを受け取った。紅茶の種類は高級なアール・グレイ。また俺の秘蔵の品を断りも無く・・・。
「引き受けていただけますか。怪奇殺人のプロファイリング・・。」
「嫌だ。」
「ちょっと、なに言ってるのよ。」
「いーやーだ。俺も年でね。危険なことには首を突っ込まないことにしているんだ。」
「・・幾つよ。」
「秘密。」
「・・・。」
無言のまま、彼女はにっこりと微笑んで俺に拳をあげた。が、そう何度も受けてやるのはしゃくに触るので右掌で受ける。
「嫌なものは嫌だ。あいつに伝えな。お前たちで勝手にやりなってさ。」
机に無造作に置かれた調書にちらりと視線を落としつつ、刑事を追い払った。彼らはしぶしぶ腰を挙げ調書を持っていく。
「ちょっと・・。どうする気よ。刑事さんいたほうが、楽じゃないの?」
「無駄な人材。ちょろつかれてるほうが邪魔なんだよ。」
ふてくされる彼女に服を投げつけられ、それを着込みつつ紅茶を口に運んだ。
「うん。美味い。お前、この手の類は上達するんだな。」
「・・そんなことより、どうするの?受けるの・・?」
「受けない。勝手さが、俺のモットー。」
煙草を取り、火をつけたところを彼女に奪い取られた。彼女はそれを自分の口に運ぶと、美味そうに紫煙をふかす。高級コールガール気取りの、・・・・さん・・・。
さっきの事件の調書によると、連続殺人・・と名を打つものには分類されにくい。飼っていたウサギさんが死んだので、丁寧に埋葬したってところだ。連続誘拐監禁事件のほうがその名に相応しい。女を手当たり次第に捕まえて飼っている。殴打や精液の痕跡は無く、食事も与えられているようだし・・。遊びで大人の玩具を使っているぐらい。丁寧な埋葬・・か。
「でも、何で服を着せたのかしら?体の毛っていう毛をみんな削いでるのに。」
「・・毛?」
「そう。毛髪から始まって、ありとあらゆる毛。死んだ彼女たちにはウィッグが被せられていたの。丁寧に櫛通しされたものがね。服もアイロン掛かってキレイだったって・・。」
「ふぅーん。」
マネキン・・・か。着せ替え遊び・・。埋葬場所は、自宅からか何処からか見える場所・・。
頭に入った被害者の年齢、髪の色、目の色。身長などはバラバラ。何でもいい・・のか。ただ、若い女が好みのようだが、そこに子供の姿は無かった。子供なら、着せ替え遊びはたやすい。毛も生えてない。それだけじゃ物足りない何かが・・・。紅茶をすすりこみつつ、考え込む素振りでナイフカタログを手に取った。欲しいものがあったんだよなぁ・・。
「・・ちょっと・・・。そんなもの買うお金なんて無いわよ。」
「ああ。お前が全部食っちまうからな。ニュータイクって街の、路地裏に突っ立ってみな。」
「あたしはそんな女じゃないって言ってるでしょ。ウスラバカ。」
「犯人さんに会えっかもよ。運がよけりゃーな。」
「囮をしろって言うの?」
「べっつにー。あ。俺買い物いってくる。じゃあな。行くならニュータイクだぞ。」
色々仕込んだいつものジャケットを着込んで、額には冷却用アイピローをつけた。ネームタグを首からぶら下げ、サングラスをかければ外出用品完成。
「・・ねえ。前から聞きたかったんだけど、そのアイピローは何の意味があるの?」
「意味なんてねえよ。気持ちいいじゃん。バーイ。」
呆れ帰る彼女に後ろ手を振りつつ、家を出た。さてさて。いい趣味のボーイに逢えるかな。
こんなところで人物紹介もなんですが・・・。
ルネ・モール・ロウ
訳のわからない男。一応、語りでのような主人公のような・・。
掴みやすいような、掴みにくいような。
もともと、刑事さんだったらしいですけどね。
裸で眠るのは・・殺されたとき、不便ですよ。
レディー・フラネルロ・バース
いい女。ってモノを連想してください。
ワンレンで、唇が赤い・・・。しなやかな腰つき・・。などなど。
いわゆる。悪女って者ですか。
ルーブル警視
主人公の同期だったらしい人物です。
主人公を頼りにしているんですが・・・。
警視になるには、ちょっと早すぎですかね・・って年頃。
ルネさんとは同い年。・・だと思っております。・・彼は謎が多いですからね。
ちょっと暢気な探偵