ビルに入り、コンクリート打ちっぱなしの階段を上がりきると、一つのドアに突き当たった。男はそのドアを開け俺たちを招き入れる。部屋は、豪華な絨毯が敷き詰められていて外見からは想像が出来ないほどキレイだった。ガラスは防音設備が整い、銃弾も弾き返すだろう。壁も集音細工。部屋の中央には、何故か大きなベッドがあり、ライトアップされていた。一歩間違えばエッチビデオのセットのようだが、周りにあるマネキンや、メジャーセットなどがそれを打ち消すように散らかっている。
「あ。あの・・・。服を脱いで、ベッドに座ってください・・。」
男は呟く。フラネルロは黙って服を脱ぎ始め、全裸になると素直にそのベッドに座った。彼女の身体は柔らかなライン。触れるとその柔らかさが弾けてしまうような・・艶。俺は窓際に立ち、外の様子を眺めた。見えるのは・・雑踏の街。ネオン街。ここからでは、公園は見えない。その窓に手を当てながら、部屋の奥の壁まで歩くと部屋と同系色のカーテンを見つけ思わずそれをあけた。中には吊るされた裸体の女が飾られている。マネキン・・だろうか。しかし、今にも動き出しそうな生きているように見える・・。そっと触れると、生肌のような感触が伝わった。口元に手を近づけるが、呼吸はしていない・・。やはり、マネキン人形なのか・・。
「ああ。それは・・新作なんです。まるで、生きているみたいでしょ?」
気がつくと男は俺の真後ろに位置していた。気配が全く無い・・。
「さあ。今度はアナタの番だ。」
男に振り向けさせられ、ベッドを見るとフラネルロは裸のままベッドに寝転がっている。
「ああ。彼女は・・眠ってしまってね。とても綺麗な人だ。でも・・。」
何か足りない、と言わんばかりに言葉を区切る男。男はカーテンを閉じると、俺の手を取り、ベッド際まで誘導した。静かに眠っているだけに見えるフラネルロ。ただ、微かに匂うクロロフォルム。無味、無臭のはずだが、なんとなく勘で。
「さあ。」
「・・待って。ねぇ、モデル志望は私たちだけなの?」
「いえ・・。奥の部屋で休憩されてますよ。」
すっと、俺の後ろに回りこむ男。本当に嫌になるぐらい気配というものが無い。
「・・私・・。緊張しすぎて、気分が悪いの。休ませて・・。」
「・・。」
一時の沈黙の中、微かに何か聞こえた。
・・・・たすけて・・・・・
もう一度聞こえる。男は俺の後ろから離れ、何故かあの同系色のカーテンの方に行く。その間に俺はフラネルロを起こし、身体を揺らした。彼女はカクラカクラと揺れるだけで反応が無い。寝ているにも程が・・。
「おい。フラネルロ。起きろ。」
「うぅーん。もう少し寝かせてよ。せっかちぃ。」
「バカ言ってる場合か。」
小声で語る中ふと肩を叩かれた。
「お嬢さん。」
「は・・はい?」
微妙な恐怖に声は裏返り・・。
「美しいと思いませんか?」
そういわれ、そっと男が指差す方を見ると・・。さっきマネキンだと思っていた女がそこに立っている。ゾンビ??俺はゆっくりと唾を飲み込んだ。
「試作品だが、よく出来ている。今度はアナタになってもらいたくて。。」
「・・何のジョークですかね。男でも、アナタの意思にそぐいます??」
バッとウィッグを取り外し床に投げつけた。動きにくい服を緩め、胸のふくらみを外す。男は怪訝な顔で目を細める。
「なあ。一つ聞いていいか?そいつ・・マリオネットシューター・・か?」
「・・それを知っているお前は何者だ。」
「さてね。」
一本の煙草を口に加え、ライターで火を点し紫煙を揺らめかせる。こんな野暮用で目的物に出会えるとは思っても無かったぜ。
「しっかしさ。落ちぶれたものだ。人形に人形を作らせるなんてね。」
「・・人形ではない。れっきとした新人類・・。」
「作り物、だろ?人形は生命体は産まない。それだって立派な作り物だ。」
俺は裸のマネキン人形を指差した。それ・・いや、彼女は瞬きもせず口を半開きに無表情で・・冷たい。今まで生きていただろう、人間の作り物・・。新人類なんてばかげた話だ。
「・・・・違う。違う!!!」
今まで無表情だった奴はいきなり大声を張り上げ、すたすたと壁際まで歩くと何かの操作をした。すると、壁は機械的にせり上がり、現れる隣の部屋。そこには数十対の機械人形がおのおの魅力的なポーズで固まっている。命令が無ければ動かない。動けない。
「素晴らしいだろう!!これは全て私が製作した。消して死ぬことの無い人間たち。」
「・・おいおい。人は死ぬからおもしれぇんだって。」
そんな突っ込みはさておき、あれらを動かされると、制御装置の壊れたバカ力で向かってこられるので厄介極まりない。うーむ、どうしよう。などと考えている矢先。パンっと乾いた銃声が聞こえ、顔を上げるとあの男の胸元に一つ穴が開いていた。
「何ぼんやりしてるのよ。やることは手早くっ。」
後ろのベッドで騒ぐフラネルロ。彼に銃弾を浴びせたのは彼女らしい。だが、彼は一瞬その体の穴に戸惑いを見せたが、何事も無かったように笑い始めた。
「・・あら??」
「無駄なんだなー。ソレが。何処に心臓部品があるのかなーっと。」
「心臓部品??」
「そう。心臓部品。タイプによって異なったり、イロイロ・・と・・。」
「はぁ?」
「早く服着て、戦闘体制とらないとマジで死ぬぜよ。」
男はひとしきり笑った後、右手の5本の指から一本一本ゆっくりと三十センチはあるだろうと思われるナイフのようなものを出し始め、左手の5本の指からは同じく三十センチ程のピックを伸ばした。
「あれが人かね。化け物。」
「・・洗練された美しさがわからないのか。愚民・・。」
「さて、俺は愚かな鈍間じゃないからな。少なくもお前よりはな??」
タバコを指で弾き飛ばし、靴底で揉消した。綺麗な絨毯に黒い墨がつく。奴はそれに不満を感じたようで、眉間にしわを寄せた。














こんなところで人物紹介もなんですが・・・。



  ルネ・モール・ロウ
   訳のわからない男。一応、語りでのような主人公のような・・。
   掴みやすいような、掴みにくいような。
   もともと、刑事さんだったらしいですけどね。
   裸で眠るのは・・殺されたとき、不便ですよ。


  レディー・フラネルロ・バース
   いい女。ってモノを連想してください。
   ワンレンで、唇が赤い・・・。しなやかな腰つき・・。などなど。
   いわゆる。悪女って者ですか。
   


 ルーブル警視
  主人公の同期だったらしい人物です。
  主人公を頼りにしているんですが・・・。
  警視になるには、ちょっと早すぎですかね・・って年頃。
  ルネさんとは同い年。・・だと思っております。・・彼は謎が多いですからね。