前回の事件で,不明なものが一つ。
俺の記憶違いだといいが,行方不明者リストと俺の覚えている限りの女の数が違う。
一人・・。足りない。
ばらばらになってしまった女たちの身元調査書を眺めながら,俺は眉間にしわを寄せた。
マリオネットシューター・・。その目的は・・。いったい何なんだろう。
造っては消す。造るものが無用なものなら,はじめから造らなければいい。・・・。
ただ・・。人の脳に組み込むあのチップは,その人物の欲望をゆすり起こす代物で・・。
薄れ行く記憶の断片を呼び起こしつつ,ちょうど差し出されたコーヒーを口元に運んだ。
「ねえ、ちょっと。それ・・お客さんのコーヒーよ。あんたのはこっち!!」
「んあ?」
調査書から顔をあげると,むむっといきり立つフラネルロが俺を見下ろしていた。その彼女の後ろには,前回訪れただろう刑事が二人。真顔,無言のままソファに腰を下ろしている。
「そう言えば,まだいたのか。ご苦労さん。もう帰っていいぜ。」
「そう言うわけには・・。」
男の一人が俺の持つ調査書に視線をずらし,口篭もる。
「あ。ああ。そうか。ほれ。」
彼らに書類を投げ返し,俺は口をつけてしまったコーヒーを飲む。やっぱりコーヒーは深い味わいの・・。
「この一ヶ月間,連続して起こっている怪奇殺人をご存知ですか?」
「んんー?しらねーよ。」
ソファに座るもう一人の男は静かに語り始めた。聞きたくもないことだが,報酬という金の存在に背に腹はかえられない。男たちは一つのアタッシュケースに,100ドル紙幣を目いっぱい詰め込んできてくれたし・・。まあ,あの気に食わない男のポケットマネーだとは思うけどね。
「犯人の目星は大体,ついています。」
「・・捕まえろよ。」
「え、ええ・・。ただ、目撃者はすべて,殺されました。体のすべての血を抜かれて。」
「やっだ。それって吸血鬼みたいじゃないの。」
興味津々の彼女は,トレーを胸に抱きかかえたままなぜか俺の膝の上に腰を下ろした。
「ええ。首に噛み付いて・・血を抜く。吸血鬼を真似たものならそうするでしょうが,犯人は心臓を抉り出しています。生きたまま・・ね。」
「被害者はみな,生きたまま心臓を抉り取られて,生きたまま血を抜かれているんです。」
ばらばらになった書類をかき集めていた男はそう付け足した。
身の毛が総毛だったのか,フラネルロは少し体を震わせる。
「血を抜かれる間,ずっとって、痛くはないの?悲鳴を上げるとか・・。」
「すみません。何も証言は取れていないんです。医師判定のみで・・。」
イヤーな。予感。面倒くさい仕事が舞い込んだ。
「ま,大方。被害者は何かの催眠術でもかけられてて恍惚としていたんだろうよ。」
俺が彼らに手を伸ばすと,彼らは無言のまま鞄から一束になっている書類を取り出し,俺に手渡した。厚さ五センチもあるような調査書と・・云々。目を通すのが嫌になる。
「お願いいたします。」
頭を下げる彼らに手を上げつつ・・。
「なあ・・。あんた達,血液型は?」
帰ろうとしていた二人は振り返り,O型。B型とそれぞれ告げて,呆けたように口を開いたまま立ちすくむ。
「それが何か?」
「あ。いやー。聞いてみたかっただけ。」
再び書類に目を落とすと,不意に彼女は俺の膝から降りて彼らを見送りに玄関へ消えた。
ぱらぱらと眺める文字の山。
被害者の年齢は5歳から18歳。男女問わず。非行暦はなく,・・どちらかというと裕福で、品行方正。
犯行時刻は朝の7時から10時。昼の1時ごろから3時。夜の5時から7時。
・・・。何だ・・・?
「ねえ、ちょっと。ダグラスさんボールペン忘れていったわ。」
「・・どっちの男だ?」
「グレーのスーツのほう。」
「だから,どっちだよ。」
「あんたに書類を渡したほう。O型のほう!!名前ぐらい覚えなさいよ!」
常識。と,はき捨てつつコーヒーを片付けはじめる彼女。腰を曲げ,コーヒーカップを持ち上げる際に見える胸元の膨らみが・・。素っ裸のときとは違い,吸い付きたくなるな。チラリズムはどこの国の色話だったか・・。
「何よ。」
「いや。何でもないけど。」
そそくさと書類を見ながら,視線は今度は彼女の足。短いタイトスカートから見えるフトモモ。脚線美豊かな・・。
「あのねー。イヤラシイ視線を投げかけてないで,仕事しなさい!!」
彼女はそう怒って,キッチンに行ってしまった。お尻もキュートだ。
長年生きているが,性欲なんてほとんど消えているものだと思っていたけど,・・・。これも本能。かな。
心臓を抉り出し,血をすする。か。前の事件も中途半端なのに新しい事件とは,忙しい。
しかし・・。消えた女。操り人形になっていたとすれば,どこかで生きているに違いないが・・。
心臓と,血。心臓は握りつぶされてはいないはずだ。抉り出すっていっても,どんな馬鹿力なやつだ?
もしかして,またマリオネットが絡んでいるんじゃあ・・。だから,あいつは俺に厄介ごとを振り掛けるのか?
ますます・・嫌なやつ・・。
「あら、ちょっと・・。」
「なんだよ。」
彼女はいつのまにか俺の前に達,俺の顔を覗き見ている。目の前に広がる胸元・・。
「あんたも,真剣な顔できるんだ。はじめて見た。」
俺の顔をしげしげと見つめる彼女は,・・・。正体不明の女。
もともとスパイ。潜入操作はお手の物。だったらしいが,色仕掛けは不得意か・・?
「まじめな顔してるって誉めてるのに〜この男はーー!!」
どこ見てる!とばかりに平手打ちを食らった。それは見事にヒットし・・・・。
俺の体は寝床であるこのソファーに転がった。その,転がる俺の体に彼女は四つんばいで圧し掛かる。
むっちりとした太ももが大きく開かれ,目の前には豊満な胸の谷間が広がり・・。
「・・・ねぇ・・・。あんた,探偵の腕はいいのかもしれないけど,こっちはどうなのよ?」
彼女はちらりと俺の下腹部を眺めた。
「さぁ。もう何年も使ってないんでね。」
含み笑う彼女の口元。小さなほくろが一つ・・。いつもの完璧な化粧が少し乱れている・・。
「おまえこそどうなんだよ。がばがばじゃねぇのか?」
「人を娼婦のように言わないで。何なら試してみましょうか??」
「・・。俺は獣か?」
「あら,違うの??ぼうや。」
妙な間と共に吹き出す苦笑。俺はその胸に掌を押し当て・・・。固過ぎない弾力に浸り・・。
仕事そっちのけに,彼女の体に浸った・・・・・・・。
彼女の喘ぎ声に,電話のベルも聞こえないほど・・。
こんなところで人物紹介もなんですが・・・。
ルネ・モール・ロウ
訳のわからない男。一応、語りでのような主人公のような・・。
掴みやすいような、掴みにくいような。
もともと、刑事さんだったらしいですけどね。
頭から電波を飛ばす。アナタは・・機械ですか・・??
レディー・フラネルロ・バース
いい女。ってモノを連想してください。
ワンレンで、唇が赤い・・・。しなやかな腰つき・・。などなど。
いわゆる。悪女って者ですか。
ルーブル警視
主人公の同期だったらしい人物です。
主人公を頼りにしているんですが・・・。
警視になるには、ちょっと早すぎですかね・・って年頃。
ルネさんとは同い年。・・だと思っております。
・・彼は謎が多いですからね。
とても,金持ちらしいです。
ダグラス刑事
O型。
特徴といえば・・。グレーのスーツ??
今回はじめて,名前が出た彼である。