「こっちだ。迷い込むなよ。」
不安定な足場。まだ所々に雪が残り、ぬかるんだ場所に足を取られたり転びそうになったり。海都の足には追いつけなくて、高地なため息も上がる。それに、寒い。だけど、芽吹きの時期もあって可愛らしい植物がやたらと目に付き、ファインダーごしに見る姿は愛らしくもあった。
次々にフィルムに焼き付けては、海都の姿を探して追いかける。一時間もたたないうちにフイルムは四つ目に到達していた。動き回っているのに体は温まらず、立ち止まっては何度か体を擦った。
海都は、小さな籠に山菜を摘みいれ、時々こちらを眺めては溜息をついている。僕の足が遅いのと、体力の無さに呆れているんだろう。時々、木に寄りかかっては体を休め、気が付いたら海都の姿は何処にも見当たらなかった。何処へいったのか検討も付かないし、戻るといってもどっちの方角か。何処から来たのかさえ分からない。あちこち歩き回ればどこかに出るだろうか。
山荘は、確か水の音がしていた。少し休憩を取り、水の音だけを頼りに歩くと、木の細枝に眼鏡を持っていかれてしまった。眼鏡を探そうと振り返ったそのとき。足元が崩れて・・・・・。僕の体は宙を舞い、落ちた。落ちた瞬間に身体がクシャッと潰れるような音が聞こえ・・・。切るように冷たい水の感触と共に僕は意識を失った。
カンッカン・・・。そんな不思議な音に気がつき、無理やり目をあけるとぼんやりした人の姿が目に映った。僕は・・生きている。だけど、体は動かない。・・重い。
「幸之助。気が付いたのか。・・幸之助。」
「・・か・・いと・・・?」
「そうだ。・・寒いか?」
「・か・・ない・・。」
「なんだ、もう一度・・。」
「わ・・ら・・・ない・・。」
「動くなよ。」
海都はそういうと、僕の口元に何かを近づけ、口の中にソレを入れた。ソレはとても苦く、咽こむようにしてソレを吐き出す。口の中は血の味がして・・。上手く呼吸も出来ない。
「飲んで。少し楽になる。・・ほら。」
「や・・。い・・や・・。」
無理やり口を開かされ、苦い汁を入れられる。ソレを吐き出すのは困難で喉の奥に流れていった。
「棗が知らせてくれた。・・今飲ませたのは薬草の汁。痛みが退く。」
「・・か・・らは・・。」
「なんだ?」
「か・・め・・ら・・。」
「バカかお前。そんなもの庇ってっ。」
「あ・・・。う・・。」
言い返そうにも上手く言葉が出ない。大事なものなんだ・・。そう言いたいのに・・。
「幸之助。わかるか。感触あるか?」
「・・ん・・。」
首を振りたい。何をされているのか分からない。また・・意識が遠のく・・。
「頑張れ、幸之助。起きてろ。幸之助。幸之助。」
海都はそう僕の名を呼びながら僕の頬を叩く。起きて・・いられない。凄く眠たい。
「起きていろ。幸之助。これ飲んで・・。幸之助・・飲め。オイ・・。」
目を・・開けていられない。少し体を抱き起こされ、柔らかい感触が口を塞ぐ。苦いものが口の中に流れ込んできたが、抵抗すら出来ない。抱き上げられると、体の中から生暖かいものが溢れ口から流れ出た。チッと海都の舌打ちが聞こえ、体はまた横に倒された。
「幸之助。もう少し起きていろ。幸之助!!」
海都の声が遠くに聞こえる。何か言ってるけど・・わからない。触る・・・?何・・?
「ここ、わかるか。ここは。・・幸之助。」
だんだんと触る場所を変えているらしい。右腕。左腕。腹。右大腿部。左大腿部。・・・足先までじっくりと僕が感じる場所を探っている。
分からないのは左腕と・・左足。右は何とか動くようになってきた。手を握る行為をして見せたら、彼は少し安堵したような息をつく。さっき飲まされたのが効き始めたんだろうか。
意識が回復して・・きたような気がする。不意に、一物を握られ体が跳ね上がると、左半身が異常なほど痛み、身を捩ろうとしたが阻まれた。声も出ない。涙が溢れて止まらない・・。
「判るんだな?・・やっと効いてきたか。それなら・・。」
海都は僕の体を抱き起こし、自分の体に僕の体を預けさせると僕の体を弄り始めた。探っているのは僕の股座の奥・・。身を捩ろうにもがっちりと体を押さえ込まれていて身動きすら出来ない。
「あ・・やめ・・やめて・・っ海都っ・・っ。」
「大人しくしろ。体の力抜いて、楽に。俺に体預けて。」
「い・・いやぁ・・っ。」
下の穴にツプリと・・指をねじ込まれ、体が硬直する。ぐいぐいと何か奥を探り、指が動く。
「や・・いやだぁ・・やぁ・・あ・・あ・・。」
頭を振り、動く右手で必死に海都の体を叩き放してもらおうと必死にもがく。痛みよりもその行為から逃げようと優先して暴れたが、海都は力強く僕を押さえ込んだ。
「もう少し・・。だから暴れるな。もう少しだから。幸之助っ。」
耳元で怒鳴られ体が萎縮した。悔しい・・・。何で・・。海都の指は奥まで入り込み、そこを弄ってから一度するりと指を抜くともう一度・・。今度は何か大きいものを突き上げ、入らないと何度もソレを繰り返した。もう・・暴れる力は無かった。勝手に熱くなっていく息がもどかしく辛く・・悔しい。一物は高くそそり立ち、熱い。嫌なのに・・どうして・・。
「幸之助。体・・倒すよ。」
急に優しくなった海都の声。ゆっくり、優しく倒され、子供のように髪を撫でられた。
「もうすぐだ。すぐ・・痛みが退く。乱暴な真似をして済まなかった。」
いまさら謝罪されても怒る気力さえなく、目の前に広がる青い景色をぼんやりと見つめた。不意にその景色が遮られて海都にキスを受け、口の中に苦い汁が注ぎ込まれる。それを無理やり飲み込まされると、咽こんだ。だが、不思議に体の痛みは無い。[効いてきた。]そう呟く海都は安堵に満ちた溜息をついた。
彼の背中にもたれ、彼のゆっくりとした動きに合わせるような息遣いが聞こえる。昔。たぶん。こういう雑木林が茂る山で誰かにおぶさり、目を閉じていたようなことがあったような気がする・・・。たぶん・・。ずっと・・ずっと前に・・・。