続・貞視 帝司という男
「なあ、弁当作れよ。」
「・・は?」
夕飯を食べ終わった、まったり時間に貞視帝司という男は突然な申し出をした。ぷかりと煙草をふかし上げ、開いたままのカーテンの窓の向こうをぼんやり眺めている。もうずいぶん前に日は落ち、外は真っ暗だ。その向こうに見える景色といえば、このアパートと同じ建物の玄関部分。それも、部屋の明かりがあるためにみえっこない。
「握り飯でいいからさぁ・・。」
「飯、炊かないとないよ。」
家にある炊飯器は一合焚き。それも、今の食事でご飯はない。食器を片付けることもあり、腰を上げて台所に向かった。何を考えているのか分からないが、一合の米を洗って炊飯のスイッチを押した。
「俺、急ぎの仕事があるから勝手にしてろよ。」
奴の後ろを通り過ぎ、隣の部屋に続く襖を開けた。そこには敷きっぱなしの布団と、パソコンがある。六畳の居間と、四畳半の寝室、兼仕事部屋。一応、台所とトイレ、風呂がある。この部屋には押入れがついているが、仕事の書類や本でいっぱいで布団をしまうスペースがないのだ。付けっぱなしになっているパソコンの前に胡座をかいて座り、パソコンデスクにおいてあった眼鏡をかけた。癖のように煙草を加えて火もつけず、エンターキーを押して画面表示させた。
「何だそれ。」
不意に、頭の上で聞こえる奴の声。
「プログラムのソース。設計図みたいなものだ。」
「ふぅ・・ん。」
あんまり興味のないような返事が返ってきたが、貞視はごろりと布団の上に転がった。別に、この部屋に来てもやることはない。まあ、向こうの部屋にいても何もないのは同じだが・・。
「眼鏡かけるんだな。始めて見た。」
「ん・・。ここに座るときはね。磁気防止の役目もするとかしないとか。お前、やることないなら帰れば?言え、隣の棟だし。」
「ん〜。」
気のない返事を聞きつつ。パソコンのキーを叩きつづける。分からない、興味がない人にはまったく何をしているか分からない。ソースの文字を目で追いながら、残りのプロセスを頭の中でシュミレーションしつつ文字を叩く。貞視は静かになったから眠ったかと思ったが、振り向くとプリントミスのコピー用紙にシャープペンを走らせていた。
「何やってんだ?」
「ん〜。絵、描いてる。人物画。好きなんだよ。」
「へー。高尚な趣味があったんだな。」
「ああ、俺、高校の美術教師だし。あ。それから。部屋、引き払ったんだ。今日からここに住むから。」
「あ!!」
突飛な事を聞いた為か・・。画面プログラムを全消去してしまった。慌てて振り向き、もう一度聞こうとしたがピーピーピーと炊飯が終わった音が響く。
「お。焚けたな。弁当作れよ。」
「ちょ、ちょっと待て。さっきなんて言った?」
「ん?何が。弁当作れって・・。」
「い、いや。その前。お前の仕事と・・。」
「いいから、さっさと作れよ。」
「・・。」
ま、まあ・・いい。後で聞きなおそう。俺は気を落ち着かせ、立ちあがって居間を抜けて台所に入った。弁当って言ったって、突然作れるものでもない。塩で握ったむすびを二つ、作り、とりあえずお茶を入れた。昔使っていた水筒が何処かにあるはず・・と、探し、ようやく見つけて水筒を軽く洗って冷めてしまったようなお茶を注ぐ。握り飯に海苔が定番だが、海苔は無し。仕方なくラップで包んでアルミホイルを巻いた。それを居間の机において・・。なぜかため息が出る。
「おい。出来たぞ。」
「おー。」
いそいそと立ちあがり、居間に来て微笑む貞視。一体何を考えているのやら。そしてなぜか紙切りバサミを手にしている。
「なあ。何処に行くんだ?」
「紅葉狩り。」
「・・は?」
「紅葉狩り。行こうぜ。」
「・・今、何時だと思ってるんだ?」
「ん?」
貞視は辺りをきょろきょろしたが、自分の腕時計を眺めて九時。と呟いた。
「その、夜中の九時に。何処に行くって?」
「だから、紅葉狩りだって。」
「・・だから・・・・・・・。何処の?」
「どこでもいいじゃん。」
「・・・・・。なあ。貞視。紅葉狩りって言うのは何だと思ってるんだ?ハサミ持って何しに?」
奴は暫く考えたのか、腕を組んだ。
「もみじってのを刈り取るんだろ?」
「じゃあ、何か?世の中の皆様は、紅葉狩りと称して環境破壊に徹しに行く。ということか?」
「何だ。違うのか。」
彼は何故かあからさまにがっかりと肩を落とした。俺は呆れて言葉もない。大きくため息だけが漏れた。
「あのな。紅葉した葉っぱを愛でに行くんだ。昼間に。」
「なぁんだ。つまんねー。葉っぱなんか見たって面白くねぇよ。見てるならお前が乱れた姿がいい。」
「・・くだらねぇ事言ってないで、これ持って帰れ。」
俺は握り飯二個と、水筒を奴に抱かせた。そのままパソコンの前に座り、消去してしまったプログラムを復活させる。奴は弁当を抱えたまま部屋にやってきて、布団の上に座りこんだ。
「だから。俺はここに住むって言ってるだろ?」
「・・・は?」
またもや・・デリート・・・。
「俺、殆どここに来てて部屋無駄だったから引き払ったんだ。」
「・・荷物は?」
「コンテナ。」
「着替えは?」
「あ・・。」
「あ。じゃねえよ!!誰がそれ許可したんだ?俺はお前と住むとはこれっぽっちも考えてねぇし、第一、俺とお前は・・。」
「伺いを立てた覚えはねえよ。」
開いた口が塞がらない。というのは、このようなことを示しているのだろう・・。もう、ため息も出ない。
「まあ。よろしくな。」
握手を求めて伸ばされた手。それを弾き飛ばそうとしたらぐっと掴まれた。奴の力に簡単に引き寄せられ、奴の胸に顔を埋める。
「葉っぱみたいに色づけよ。」
「嫌だ。」
胸に引き寄せられたまま押し付けられ、耳元にキスを当てられた。
「やめろ。仕事が残ってんだよ。」
「そんなもん後にしろよ。夜食もあることだしさ。」
「って。そんなもので納得するものかっ。俺はお前の玩具じゃない。」
「ああ。恋人だろ?」
「それは断ったはずだ。は・な・せ!」
「逃げてみれば?」
奴は片手で俺の体を押さえつけ、もう一方で俺の服を持ち上げて肌に手をあて撫で始める。
「や、や、やめ・・。」
「感じやすくていいな。惚れてるぜ。」
「俺は惚れてなーい!!」
叫んだどころでその手を振り切ることが出来ない。子供が大人に押さえつけられてるような感じだ。顎を持ち上げられ、そのままキスに持ち越され・・。フレンチキスから、だんだんと深く・・。探られていく。邪魔だと眼鏡が取られ、貞視も自分の眼鏡を取って部屋の隅に放り投げた。目の前にぶら下がるネクタイをじっと見つめ、その乱れたネクタイを思い切り締め上げた。が、苦しがる風もなく奴は難なくそれを解き、終いにはネクタイを外して・・。俺の両手首を合わせると、そのままネクタイでぐるぐる巻きに縛った。
「え・・?」
「オイタは駄目よ。優考。」
にっこり笑う貞視。奴はスーツのジャケットを脱ごうと俺から手を離した。その隙に逃げよう。としたが・・。足をかけられ、布団の上に突っ伏した。手が縛られているから思うように立てない。
「いい姿だな。」
「っ。誰のせいだっ。」
「ふっふっふ。」
貞視の怪しい笑いを聞くか否か。ずるりっとズボンもトランクスもはがされ、奴は俺のお尻側に座る。
「ばっ。」
「いい眺めだ。それじゃあ・・。」
頂きます。といわんばかりに、奴は俺の尻を押さえ、尻の割れ目にふっと吐息がかかる。そして、生暖かいような・・ぬるっとしたものが穴の周りを舐め・・。
「えっ・・や、やめろ。きたないっ。やっ。」
膝立ちでお尻を突き出すような形で押さえられ、舐めまわされているという屈辱。
「ふ・・っ・。」
恥ずかしい・・。中に挿入され、クニクニと動き回るその舌が・・。体が痺れるような感覚。逃げない。と思ったのか、貞視は俺の尻から手を離して前のモノをしごき始めた。先端から袋の裏まで。丁寧に指の腹がなぞっていく。
「や・・やだ・・。やめろ・・。」
「まだ、言うんだ。可愛い奴。」
するり、と舌が穴から出て、ほっとしたのも束の間。くるりと俺の体は回転させられ、奴の目の前に足を開いて晒した。足を閉じようとしたが、すぐに掴まれて簡単に開かされる。股間に顔が沈んでいき、口が開き・・・・。ぱくっと俺のものを咥え込むと、舌先がねっとりと絡みつき刺激され、長い指で穴を弄られ。快感とか、気持ちいいとか言う問題じゃなく・・。
「や・・やめ・・。へ、へんに・・・なるぅ・・。」
「なっていいよ。させてるからさ。」
「嫌だって・・。あ・・ぁぁあっ・・。」
「ちゃんと感じてんじゃん。色も綺麗な桜色。葉っぱより艶があって綺麗だ。」
「ばっ・・。」
覆い被さってくる奴を弾き飛ばす力もなく。キスを受け入れて・・。
「手・・。外してくれ。・・怖い・・。」
「逃げない?」
「・・ん・・。」
貞視はにっこり笑いつつ。ネクタイを解いてくれた。俺はその手で奴の首に手を回してしがみ付く。
「ごめん。そんなに怖かった・・?」
「ばかやろ・・。」
俺とは違う煙草の匂いのYシャツに顔を埋め、奴のモノを受け入れて・・。体に力が入る。それを貞視は可愛いと囁いた。
「動くよ。」
「あっ・・やっだ・・っ。」
ゆっくり・・ゆっくり。俺を抱えたまま、奴の腰は前後に動き、俺の中にあるモノが出たり入ったりを繰り返す。不意に、中でぴくりと跳ね上がったりするのが俺の体を震わせる。
「やっぱ、足りなかった・・かな。優考、硬い。」
「だからっ・・。やだ・・って・・ば。エロ魔。」
「それ、誉めてる?」
ぐっと中に入り込まれて俺は背中をそり上げた。そのまま、布団に体を預けさせられて・・。自分のモノを手で弄られ、中では性感帯を刺激されて・・。イクなって言うほうが無理だ。
「ああっ!」
一気に出しきり、俺はぐったりと布団に腕を投げ出した。奴はいつも通り、俺からモノを出して俺の腹に出す。そしてすぐ、拭き取る。何かいつも・・俺だけイかされてるような・・。
「優考。俺、ここに住んでいいよな?」
「・・ん・・・。」
もう、それどころじゃない俺に・・。優しく語り掛ける貞視。まったく、ずるい・・。優しく髪に触れ、最後とばかりにキスをして奴は笑った。
いつも、金曜の夜・・・・。貞視は俺を抱く。好きだと囁く。でも、抱かれる俺は・・・。どう思ってるんだろう・・。