続・貞視 帝司という男
ぼんやりと。熱いシャワーを浴びた。冷え切っていた体が、徐々に暖められて何だか痺れているみたいだ。外は静かで、まだ雪・・降ってるのかな。
「まだか、入るぞ。」
しびれを切らし、風呂場に乱入してきた貞視。思わず振り向いてしまい、始めて彼の裸を見た。結構がっしりとした筋肉質で、骨ばってて、毎日ビール飲んでる割には締まってて・・。腰の位置が高く足が長い。俺を壁に追いやり、彼は流しっぱなしのシャワーを浴びる。目の前には鎖骨・・。いや、その下あたり。じっと見上げていたら、見下ろされた。
「何だよ。」
「いや・・。何でも無い。」
「んん?」
「何でも無いってば。」
「そうか?」
貞視は何気なくシャワーを止め、壁に手をあてて身を乗り出した。ゆっくりと降りてくる貞視の顔。ずっと見上げていたから・・。素直に受けるキス。軽々と抱き抱えられ、降ろされた布団の上。いつもより、貞視が興奮しているのがわかる。無言のまま見つめあい、深くキスを交わして・・。体を這っていく手・・。体を嘗め回されて、素直に反応する俺の体。首、鎖骨・・乳首。這いずり回る舌。
「あ・・・。」
もう、息が・・熱い。いつもより強く、激しくモノを弄られているのに、嫌じゃなくて・・。
「ぁ・・ふ・・。」
漏れていく声も恥ずかしくない・・。足を開かされ指が入っていく。
「んぁっ・・ふ・・。んん・・っ」
「優考・・。」
耳元で囁かれる声。覆い被さる体。厚い・・胸板。いつもより感じて、手を首に回す余裕すらなくて、その胸に爪を立てて・・・。俺の中に入っていたものが指から、彼のモノにかわり、奥へ、奥へと入り込むその動きが激しくて・・。貞視が喋らない。キスするその吐息が熱い。
「あ。」
始めて・・。その最中の貞視の声が漏れた。俺を先にイかせようと強く擦り上げる。
「ぁ・・。貞視・・。痛い・・。」
モノの先端を指の腹で撫でられて・・。俺の中では貞視が暴れて・・。
「さだ・・み・・。っ・・。帝司っ。てい・・じ・・っい・・イイ・・っ。」
「優考。愛してる。」
ドクンッ・・・。そう・・。俺の中で貞視が・・弾けた。それに伴って俺も絶頂で、体を逸らしてイき・・。始めて。熱いモノが中で弾けた。溢れ広がってくのがわかる。ゆっくり引き抜かれ、それが一緒に零れてく感触が伝わる。それでも貞視は俺から退かない。キスの嵐。何度イかされたかわからない。絶頂感でどのくらい声を荒げただろう・・。
「て・・帝司・・。もう・・。だ・・、駄目・・。」
そんな言葉もキスで塞がれた。貞視が俺の中で果てたのは覚えているだけで三回。繋がったまま眠るんじゃないか・・。そんな錯覚まで覚えた。結局、俺が気を失ってしまい・・。貞視が満足できたかどうかはわからない。でも、いつもは俺ばかりがイかされていたような気がしたが、今回はあいつも少しは満足できたんだろうか。あれでも、いつも遠慮してくれてたのか・・。
ぼんやりと目覚め、体を持ち上げると冷たい空気が体を刺す。立ち上がろうとしたが、腰が思うように動かない。不意に昨日の情事が頭を過り、隣を見ると貞視の裸体が布団もかけずに転がっていた。貞視のイチモツは昨日あんなに使われたというのにしっかりと立ち上がっていて・・。
「勢力増強剤でも飲んだのか、こいつ・・。」
ぽつり、呟きが自然にもれた。貞視の体に布団をかけてやりながら、その彼の寝顔を見つめて・・。おもわず。いや、自然に。彼の唇にそっと唇を添えた。軽く触れさせてから目をあけると、目をあけた貞視。
「何だ。起きてたのかよ。」
「いや。キスで目が覚めた。」
「・・お姫様かよ・・。」
「王子様だっていいジャンか。そういう話がないのは不公平だとおもったことない?」
「あんまり。文学には興味なかったから・・。」
昨日。あんなに激しく・・。体を合わせたのに。なんかとても自然な空気が流れているような・・。俺は貞視に引き寄せられ、彼の体に覆い被さるように支えられてキスを交わした。くるりと身を翻され今度は俺が貞視と敷き布団に挟まれる。ただ静かに見つめる貞視。
「嫌がらないんだな。」
「今更?」
「・・俺。お前に惚れて良かった。」
「何それ。」
「そのまんま。」
ゆっくりと下りてくる貞視の顔。ぽつぽつとした髭がアップになった。そう言えば、俺って髭生えないなぁ。そんなことをふと思いつつ、重ねた唇。ゆっくりと口の中を舐められ、舌を絡め取られて。朝から勃起しそうになりながら貞視の胸をそっと押して彼を離した。
「ん?嫌・・か?」
「・・。今日、金曜だろ?時間いいのかよ。」
「え?今、何時?」
「さあ・・。」
この部屋には時計がない。今までの俺の生活には時間というものは殆ど必要なかったから時を刻むようなものはない。貞視は慌てふためきながら、昨日放った腕時計を探し、引っ手繰るようにしてそれを掴みあげて眺めて見たが、何度か目に近づけたり離したりした後に俺に手渡した。
「何時?」
「眼鏡かければ?」
手渡された時計を見ると、・・・目を疑うような時が刻まれていた。高そうなアナログ式の長針は三十五分過ぎ。短針は・・・。言うのも憚るような時間。ようやく眼鏡を見つけ出してかけ、俺の答えを待っていた貞視に時計を手渡した。彼はしばらく黙った後に、ごくりとその喉仏を動かす。
「う・・うっそだろぉ・・・。」
ため息のような、落胆したような・・。教師の遅刻とは、どんなものなのだろうか・・。貞視はばたばたと服をかき集め、手早く着替えてから部屋を飛び出したが、不意に戻ってきて俺の額にキスをした。
「行ってきます。」
にっこりと微笑んで、また慌てて部屋を出て行き玄関のドアを少し乱暴に開閉していった。
「何だ・・あれ。」
額に手の甲を当てつつ、天井を見上げる。俺、始めて、金曜以外に・・抱かれた・・。嫌、昨日の夜からだから、金曜なのかな・・。しばらく放心した後、タバコに手を伸ばした。
時刻は多分。午前十一時四十分・・。あいつ、なんて言い訳するんだろう。不意に笑いがこみ上げて苦笑した。煙草を吸い終え、適当な服を掴んでシャワーを浴び、全身に残るスイアトに赤面しつつ。コーヒー片手にパソコンの前に座ると、仕事の催促が三件。それも、まだ一つも手をつけてない・・。
「・・徹夜だ・・。」
呟くと同時に、パソコンのキーをたたく俺。なんとも平常で、・・少し、不安だ。
「不安?・・なんで?」
そんな言葉に返ってくる言葉はない。小首を傾げつつ、またひとつ煙草をくわえた。