目覚めると、千頼の姿は無かった。パソコンのデスクトップに紙が張られ、何か書いてあったが俺は文字は読めない。取り敢えず煙草をふかしつつ、顔を洗おうと部屋を出るとキッチンに食事が用意されていた。焼いて随分時が経ったパン。珈琲にミルク。目玉焼き。パンに目玉焼きを乗せ、珈琲とミルクを半々に混ぜた。もそもそとそれを食べ、部屋に戻ってパソコンを起動させる。ロシアとのコンタクトを試みたが反応は無かった。仕方なく、この周辺地図を読み出して暗記する。千頼は学校だといっていたが・・。このあたりの学校に通っているのだろうか。文字をロシア語に変換し、近くにある学校を探すと・・。七校もある。そのうち、小学校が三つ。中学が三つ。高校は一つ。運良く、電車もバスも必要としない場所に一校の高校がある。大学は無い。千頼の年齢を聞いたわけじゃないが、多分そんなところだろう。外出禁止だといわれたが、千頼を呼びに行けば街へ出てもいいわけだ。支度を整えつつ、玄関の扉を開ける。むわっとした空気が体を覆い、俺は昨日のペットボトルに水を入れた。タバコ、ライター。パスポートにカード。と、持ち物もよし。後は玄関の鍵だが・・。外を見まわし、針金一本見つけて鍵穴に差込んだ。鍵を開けるんじゃなく、閉めれば違法ではない・・よな?意を決して歩くこと二時間。俺は方向オンチだった・・・。道は覚えたが、面白そうなものがあるとそっちへフラフラといってしまい・・。気がついたら2時間も経っていた。ペットボトルの水を飲みながら目指す高校にだけ気を向けて歩くと、三十分もしないうちに辿りついた。学校の周りをうろうろしていたらしい。校門から真っ直ぐ校舎に入ると、ロシアの家のような造りになっていて、右に行けばいいのか左なのか迷う。突っ立っていると一人のスーツを着こんだ男性が近づいてきた。どう見ても俺は不審者らしい。
「何かご用ですか?」
訝しげに見つめながら、彼は口元を微笑ませた。
「ああ。千頼に会いたい。」
「ちより?ここの生徒ですか?」
「知らない。」
「・・。苗字は?失礼ですが貴方のお名前は・・?」
「ショーハ。千頼、いるか。」
彼は内心。なんだこいつ。と思っているに違いない。それでもすぐに他の人がかけつけ、何か話していたがかけつけた人が何処かに行くと「千頼さん、ショーハさんと名乗る方がお待ちです。」そうアナウンスが鳴った。その数分後。血相を変えた千頼が足早にやってきて、俺の目の前にくるといきなり俺の服を掴んで引き下げた。千頼の顔が近い。
「家にいろって書置きしておいただろ???なんで来るんだよ。それに俺、学校教えたか??」
「いや。知らない。当てずっぽうに来た。書置きは読めなかった。それに。」
「それに?」
「千頼が傍にいれば買い物に出ていいんだろ。だから、迎えに来た。」
「かーーー。そう言う意味じゃねーっての。頭いてぇ・・・。」
「風邪か?」
千頼は思いきり俺の腰を殴った。拳が小さいと力が無くとも痛い・・。
「このまま帰れってのも・・。待ってろとも言えないよ・・。どうすれば・・。」
千頼が頭を抱え、考え抜いているが俺はというと妙な気配に気を尖らせていた。紛れも無く、угрозаの気配だ。もうすでに人に寄生したってことか・・?こんなに早く?いや、俺が気を失っていた時間はどのくらいなのか。爆発って言ったって、弾けたのは本体じゃないなら回復は早いはず・・。
「ショーハ、聞いてるのか?」
「え???あ、・・ああ。千頼、俺、この場所を見てみたい。」
「・・だから、お前人の話し聞いてないだろ。」
「なに?」
千頼は、はーーっと溜息をつきながら頭を振った。
「だから、後の時間。この学校を案内してやれば俺は出席に見とめてもらえるって話しだよ。わかった?」
「・・何で?」
千頼はもう一度、俺の胸座を掴み引く。そして、俺の耳に囁いた。
「入学希望者は優先されんだよ。留学生ってことにしておいたの。」
「あ、ああ・・。ああ・・。うん。そうする。」
угрозаの気配に気を取られていたため、ギャラリーが増えていることに気がつかなかった。そう言うことなら、気兼ねせずに調べることが出来る。